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ギターは楽器であると同時に、キャンバスでもある——それを世界に知らしめたのが、エリック・クラプトンです。
サイケデリック・アートの象徴となったクリーム時代のSG「The Fool(ザ・フール)」。そして、NYグラフィティの巨匠が手がけたストラトキャスター「CRASH(クラッシュ)」シリーズ。この記事では、ロック史に残る2つの”アートギター”の物語をたどります。
The Fool|サイケデリック時代を象徴する一本

誕生:1967年、クリームの渡米前夜
「The Fool」の正体は、1964年製ギブソンSGスタンダード。1967年初頭、クリームのマネージャーだったロバート・スティッグウッドが、オランダ出身のアート集団「ザ・フール」(シモン・ポストゥマとマリケ・コーヘルらのコレクティブ。ビートルズのアップル・ブティックの壁画でも知られます)に、初の全米ツアーへ向かうバンドの楽器や衣装の装飾を依頼したのが始まりです。
クラプトンのSGのほか、ジンジャー・ベイカーのドラムセット、ジャック・ブルースのフェンダーBass VIもペイントされました。SGに描かれたテーマは「善と悪、天国と地獄、そしてそのすべてを超えていく音楽の力」。中央にはトライアングルを持つ智天使(ケルビム)、周囲には天空の青に浮かぶ星々——まさに1967年”サマー・オブ・ラブ”の空気そのものです。
クリームのサウンドを作った「ウーマン・トーン」
The Foolのデビューは1967年3月25日、マンハッタンのRKOシアターでのクリーム初の米国公演。以降、クラプトンはクリーム解散(1968年)までの主要なレコーディングでこのギターを愛用しました。名盤『Disraeli Gears(カラフル・クリーム)』、そして「Sunshine of Your Love」——甘く太いあの「ウーマン・トーン」は、このサイケデリックなSGから生まれたのです。
数奇な旅路:500ドルの手渡しから、300万ドルの落札へ
クリーム解散後、The Foolはミュージシャンのジャッキー・ロマックスの手に渡り、その後1970年代から80年代初頭にかけてはトッド・ラングレンが所有。彼はRKOシアターでこのギターに”魅了された”一人で、「Sunshine of Your Love」にちなんで「Sunny」と名付け、ステージで弾き続けました(譲渡の経緯には500ドルで買った説など諸説あります)。
その後コレクターの手を経て、2023年11月には米NFLコルツのオーナーで楽器コレクターのジム・アーセイのコレクションへ。そして2026年3月、クリスティーズのオークションで約300万ドル(約4億円超)で落札され、ギブソンのギターとして史上最高額を記録しました。1967年にペイントされた一本のSGは、60年の時を経て「演奏された美術品」になったのです。
CRASH|ストリートアートがストラトに乗った日

グラフィティの巨匠、ジョン・”クラッシュ”・マトス
時は流れて1990年代。クラプトンが次にギターを託したのは、NYブロンクス出身のグラフィティ・アーティスト、ジョン・”クラッシュ”・マトス(John “CRASH” Matos)でした。10代から地下鉄車両にスプレーで作品を描き、やがてキャンバスに移行してストリートアートを美術館へ押し上げた立役者の一人です。
1996年、CRASHがペイントしたクラプトン・シグネチャー・ストラトキャスターがクラプトンの手に渡り、2001年には2本目も制作。鮮烈な色彩とスプレーの飛沫が躍るこれらのギターは、いつしか「Crashocaster(クラッシュオキャスター)」と呼ばれるようになります。クラプトンは2000年代のツアーやロイヤル・アルバート・ホール公演で実際にステージで弾いており、「飾るアート」ではなく「現役の楽器としてのアート」だった点も痛快です。
Crash-3:チャリティのために生まれた一本
2004年、クラプトンが主宰する依存症リハビリ施設「クロスロッズ・センター」の資金集めオークションのために、フェンダー・カスタムショップのマスタービルダー、トッド・クラウスが製作し、CRASHがペイントした「Crash-3」が出品されます。同年3月15日のロイヤル・アルバート・ホール公演で披露された後、6月24日のオークションで321,100ドルで落札。アートギターがチャリティの力になることを証明しました。
この反響を受け、フェンダー・カスタムショップは50本限定の「Crashocaster」を製作(CRASH本人が2004年末から2007年1月にかけて全ボディを一本ずつハンドペイント)。今も中古市場でコレクターズアイテムとして高値で取引されています。
なぜ名ギタリストは、ギターを「アート」にするのか
- 時代の空気をまとうため:The Foolは1967年のサイケデリック文化、CRASHは90年代ストリートカルチャーの象徴。ギターは時代を映す鏡になる
- 「自分の音」を視覚化するため:ウーマン・トーンにはあのサイケな装い、鋭いストラトの音には躍動するグラフィティ。音と見た目は呼応する
- 楽器を超えた価値が生まれるから:The Foolは約300万ドル、Crash-3は32万ドル。アートをまとったギターは、文化財にもチャリティの原資にもなる
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あなたのギターも、物語の主役になれる
The FoolもCrashocasterも、始まりは「一本の普通の量産ギター」でした。1964年製のSGも、シグネチャー・ストラトも、アーティストの手が加わった瞬間から、世界に一本の物語を持つ存在になった——ここが、この2本の物語のいちばん面白いところだと思います。
実はここからは、少しだけ私自身の話をさせてください。JUNK GUITAR ARTが生まれたきっかけは、まさにこの2本のギターへの憧れでした。
私はもともと1960年代のロックが大好きで、クラプトンの「The Fool」や、ジョージ・ハリスンが自らサイケデリックにペイントしたストラト(愛称「Rocky」)のようなギターを、自分でも弾きたい、部屋に飾りたいとずっと思っていました。でも、ああいうギターは楽器屋さんには売っていません。本物はオークションで数千万円、数億円の世界。手が届くはずもありませんでした。
だったら、自分で集めて、自分で作ってしまおう——最初は完全に自己満足で始めたことでした。役目を終えたジャンクギターに新しいデザインをまとわせて蘇らせているうちに、ふと思ったんです。「同じように憧れている人が、きっと他にもいるはずだ」と。それが、JUNK GUITAR ARTという事業の原点です。
私たちは、ギターに高品質フィルムのラッピングでオリジナルデザインをまとわせ、世界に一本のアートギターとして蘇らせています。あなたの好きな絵、AIアート、思い出の写真——あの日の私が欲しかった「自分だけのThe Fool」を、今度はあなたのために作らせてください。
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まとめ
クラプトンの「The Fool」と「CRASH」は、ギターがアートになり、アートが音楽の一部になることを教えてくれる2つの伝説です。60年代のサイケデリックから90年代のグラフィティ、そして現代のラッピング技術へ——ギターをキャンバスにする文化は、今も進化し続けています。
参考:Wikipedia “The Fool (guitar)”、Guitar World、Where’s Eric!(クラプトン公式ファンサイト)、Ground Guitar 各記事(2026年7月時点の情報に基づく)

